各国のイールドカーブ比較
イールドカーブは、異なる満期の国債金利をグラフにしたもので、短期金利と長期金利の関係を示します。
注)スポットレートやスワップレートなど他の金利を用いる場合が多いですが、ここでは国債利回りでみていくことにします。
イールドカーブは、経済の先行きを予測するための重要な指標となります。特に、以下の3つの理由で注目されます。
- 経済成長の予測: イールドカーブの形状は、投資家が経済の将来をどう見ているかを反映します。一般的に、期間が長い金利(利回り)ほど高くなり、右上がりの形状となり、これを順イールドといいますが、この傾きが大きくなると、経済成長の予測が楽観的になっていることを示します。一方で、逆イールドは景気後退の予兆となることが多いです。
- 金利政策の指標: 中央銀行は金利政策を決定する際にイールドカーブを参考にします。短期金利は中央銀行の政策金利の影響を強く受けるため、イールドカーブの形状は金融政策の効果を示しています。長期金利は現在から将来にかけての短期金利の平均値に流動性プレミアムが乗ったものなので、政策金利が将来まで一定のままなら、イールドカーブはフラットかまたは流動性プレミアム分だけ長期金利が高くなります。
- 投資戦略のガイド: 投資家はイールドカーブを利用して投資戦略を構築します。例えば、逆イールドの場合、長期債価格が高くなっている状態であるため、投資家は長期債をショート(空売り)することで、価格が下落したときに買い戻して利益を上げることができます。
各国の金利を一度に比較できる無料のサイトとして、Investing.comがあります(日本語版)。
このサイトで得られない期間の金利は、欠損値の前後の期間の値を使って線形補完することにします。
具体的な国々のイールドカーブの形状と、それに基づく今後の経済動向について見てみましょう。データは7月12日時点で得られたものです。
順イールドの国々
例: 中国、日本、フィリピン、マレーシア

これらの国々のイールドカーブは右上がりで、長期金利が短期金利よりも高くなっています。これは、一般的に経済成長期待またはインフレ予想があることを示しています。
順イールドであるにしても、日本のイールドカーブは他国に比べ低い位置にあることがわかります。それだけ経済成長期待やインフレ予想が低いことを意味します。
中期ゾーンの金利が低く、下に凸のイールドカーブの国々
例: オーストラリア、ドイツ、イギリス、アメリカ

これらの国々のイールドカーブは中期ゾーンの金利が低く、下に凸の形状をしています。これは通常とは異なる経済状況や市場の予想を反映しています。
中期ゾーンの金利が低く、イールドカーブが下に凸になっている理由
- 金融政策の影響 中央銀行の金融政策がこの形状に大きく影響することがあります。例えば、中央銀行が短期金利を高く維持しつつ、長期金利が市場のインフレ予想や成長期待により上昇する場合、中期金利が短期・長期のどちらとも異なる動きをすることがあります。
- インフレ予想 市場参加者が中期的にはインフレが低下すると予想している場合、インフレ期待の低下が中期債の利回りを押し下げることがあります。このため、中期ゾーンの金利が低くなる可能性があります。
- 需要と供給のミスマッチ 特定の満期の債券に対する需要が非常に高い場合、その満期の金利が押し下げられることがあります。特に年金基金や保険会社が中期債を大量に購入する場合、このような形状のイールドカーブが形成されることがあります。
- 経済成長の不確実性 長期的な経済成長の不確実性が高まっている場合、投資家は長期的なリスクを回避するために長期債より中期債を好むことがあります。この場合、中期ゾーンの利回りが低くなることがあります。
- 流動性プレミアム 中期ゾーンの債券が他のゾーンに比べて流動性が高い場合、流動性プレミアムが低くなり、その結果として利回りが低下することがあります。流動性プレミアムとは、流動性の高い資産に対して投資家が要求する追加のリターンを指します。
まとめ
イールドカーブは、景気状況や将来の動向を予測する上で非常に有益な情報を提供します。これを理解し、注視することで、経済全体の動きをより正確に見通すことができます。


