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全ての道は交易条件に通ず?(2)交易利得/損失

日米の交易条件を長期で観てみると、アメリカでは安定的(むしろ直近は上昇)に推移しているのに比べ、日本は1990年代後半から趨勢的に低下しています。

交易条件が悪化すると、海外との交易により得られる利得が減少しますが、それが意味することを今回確認します。

交易条件は、貿易収支、実質為替レート、賃金などにも関連しますが、これらについては別の機会に。

交易条件(Terms of Trade, ToT)とは

輸出物価を輸入物価で割った比率を交易条件と呼びます。これが改善する(値が大きくなる)ことは、自国の輸出品が相対的に高く売れ、輸入品が相対的に安く買えることを意味します。その結果、同じ量の輸出でより多くの輸入品を得ることができ、国の購買力を高める要因となります。

  • 交易利得: 基準時点と比較して交易条件が改善し、購買力が増加することで得られる利益を交易利得と呼びます。交易利得が増加すると、国民の実質的な富が増加したことになります。内閣府のHPに数式を使った解説があります。
  • 交易損失: 基準時点と比較して交易条件が悪化し、購買力が減少した場合、その減少分を交易損失と呼びます。
  • 実質GDPと交易利得:
  1. 実質国内総生産(GDP)とは国が一定期間内に生産した財・サービスの総量を、基準時点からの物価の変動を調整した値で測ったものです。
  2. 実質GDPに交易利得を加えると、国全体の実質的な購買力を示す指標である実質国内総所得(GDI)が得られます。
  3. 実質GDI = 実質GDP + 交易利得

趨勢的に悪化する日本の交易条件

交易条件は、輸出物価指数を輸入物価指数で割ることで求めることができ、GDP統計にある輸出デフレーターと輸入デフレーターから計算されます。交易利得も実質GDP表に記載されています。現在使用されているGDP統計は2015年の価格を基準としたもので、1994年まで遡及して計算されたものが得られます。

グラフを観ると、交易条件の悪化とともに、2000年代に入り交易利得も減少傾向にあることがわかります。2008年以降、交易損失も発生していますが、これは実質GDIが実質GDPより小さくなっていることを意味します。つまり、実質ベースでみたとき、生産量よりも購買力(実質所得)が小さくなっていることを意味します。

交易条件の長期趨勢、日米比較

交易条件は、GDP統計からだけでなく、企業物価のなかの輸出価格指数と輸入価格指数からも計算することができ、これらは月次でデータを取得できます。

アメリカのデータはセントルイス連銀のFRED、日本のデータは日銀時系列統計データ検索サイトから取得できます。

上のグラフは1988年12月から2024年7月まで月次で観たものです。アメリカの交易条件は安定的に推移している一方で、日本のそれは大きく変動しながら1990年代後半以降趨勢的に悪化していることがわかります。

日本の交易条件の長期趨勢は、円の実質実効レートと同様の推移を辿っています。

様々なことが交易条件の悪化とつながっていると思われます。

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