はじめに
投資信託の積立投資を行う際、信託報酬などのコストが安い商品を選ぶことは非常に重要です。長期的な資産形成を目指す場合、コストは収益率に大きな影響を与えるため、無視できません。本投稿では、投資信託の基準価額を用いて実際の積立投資のシミュレーションを行い、その収益率を分析します。
基準価額を用いたシミュレーション
投資信託の基準価額は、全てのコストを控除した1口当たりの時価です。これを利用することで、投信の積立投資のシミュレーションが可能となります。SBI証券のサイトから、投信の基準価額を設定来から日次で取得できるため、過去のデータを活用した詳細な分析が可能です。
今回のシミュレーションでは、以下の3つの投資信託を対象としました。
- 三菱UFJ eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(2018年10月設定)
- 三菱UFJ eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(2018年8月設定)
- ニッセイ・インデックスバランスF 4資産均等型(2015年8月設定)
これらの商品は低コストで運用されており、積立投資に適しています。
シミュレーションの条件
上記3つの投資信託の中では、オール・カントリーが最も遅く、2018年10月末に設定されました。公平に比較するため、2018年10月末から毎月1万円の積立投資を2024年9月27日まで続けた場合をシミュレーションしました。この期間の累計積立額は72万円となります。
シミュレーション結果
2024年9月27日時点での各投資信託の評価額は以下の通りです。
- 三菱UFJ eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):142万円
- 三菱UFJ eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):128万円
- ニッセイ・インデックスバランスファンド 4資産均等型:97万円

収益率の計算方法
時間加重収益率と金額加重収益率
収益率の計算には、主に以下の3つの方法があります。
- 時間加重収益率(Time-Weighted Rate of Return、TWR):資金の追加や引き出しの影響を取り除いた、投資期間中の各期間の収益率を掛け合わせて計算します。資金の流出入に影響されず、運用自体のパフォーマンスを評価する際に適しています。
- 金額加重収益率(Money-Weighted Rate of Return、MWR):資金の投入や引き出しのタイミングと金額を考慮した収益率です。実際に投資家が得た収益率を反映するため、積立投資の成果を評価するのに適しています。
- 累積収益率:一括投資した場合、投資時点から現時点までの収益率です。通常、幾何平均をとって年平均収益率(CAGR: Compound Annual Growth Rate)に換算したものを使用します。積立投資は、資金の追加がない一括投資とは違いますので、ここでは使用しません。
リスク指標としての標準偏差
時間加重収益率の標準偏差を計算することで、収益率の変動の大きさ、すなわちリスクを評価できます。標準偏差が大きいほど、収益率の変動が大きくリスクが高いことを示します。
シミュレーション結果の詳細
| 期間(2018年10月~2024年9月) | オール・カントリー | S&P500 | ニッセイ4資産均等型 |
| 時間加重収益率(年率) | 17.1% | 20.3% | 8.7% |
| 収益率の標準偏差(年率) | 16.4% | 17.4% | 8.2% |
| リスク調整後収益率 | 1.04 | 1.16 | 1.06 |
| 金額加重収益率(年率) | 20.4% | 24.0% | 10.7% |
リスク調整後収益率として、厳密にはシャープレシオ((収益率-安全資産収益率)÷収益率の標準偏差))を用いるべきですが、ここでは(時間加重収益率 ÷ 収益率の標準偏差)を使用しました。この大きさの順序でみると:
- 三菱UFJ eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- ニッセイ・インデックスバランスファンド 4資産均等型
- 三菱UFJ eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
この結果から、S&P500に連動する投資信託が最も効率的にリターンを生み出していることが分かります。
収益率の考察
どの収益率を用いるべきか
積立投資の場合、金額加重収益率を用いるのが適切です。これは、実際に投資家が積み立てた金額がどのように増えたかを正確に反映するためです。一方、時間加重収益率は資金の投入タイミングを考慮しないため、積立投資の実態を捉えにくい側面があります。
ドルコスト平均法の効果
積立投資では、価格が高いときは少ない口数、価格が低いときは多い口数を購入することになります。これにより、平均取得単価が下がる効果(ドルコスト平均法)が得られます。そのため、価格が一時的に下がっても積立を続けていれば、価格が元の水準に戻っただけでも収益がプラスになる可能性があります。
まとめ
積立投資における収益率の分析から、以下のことが分かりました。
- 低コストの商品選びが収益率向上に重要。
- 金額加重収益率を用いることで、実際の投資成果を正確に評価可能。
- ドルコスト平均法により、価格変動リスクを抑えながら資産形成が可能。
長期的な資産形成を目指す場合、積立投資は強力な手法です。コストを抑えた商品を選び、継続的に積み立てることで、リスクを抑えつつ効率的に資産を増やすことができます。
注:本シミュレーションは過去の実績に基づくものであり、今後の投資成果を保証するものではありません。各投資信託の投資対象やコストについては目論見書で確認してください。


