相関と因果は同じではない
あるデータとあるデータの相関が高いことが因果関係を意味するとは限らないことに、最近注意が払われるようになっています。AとBが同じような動きをしていても、AがBの原因でも、BがAの原因でもなく、AとBが偶然同じような動きをしているだけかもしれないし、C(第三要因)がAとBの原因で、Cが動いたためにAとBが同じように動いたのかもしれません。あるいは、AがBの原因と思っているが、実際には、BがAの原因かもしれません(逆の因果関係)。
こうした点をきちんと区別するために、有効な手法が差の差分析(DiD、Difference in Differences)です。
新NISA導入を例に考える
2024年に導入された新NISA制度。この制度のもと、「投信残高の前年比伸び率」と「預金残高の前年比伸び率」に変化が見られました。
日本銀行の資金循環統計によると、以下のような数値がありました:
- 投資信託(処置群)の前年比伸び率
- 新NISA導入前(2022年Q4→2023年Q4):+22.8%
- 新NISA導入後(2023年Q4→2024年Q4):+27.9%
- 伸び率の差:+5.1ポイント
- 預金(非課税制度対象外、対照群)の前年比伸び率
- 新NISA導入前:+1.0%
- 新NISA導入後:+0.6%
- 伸び率の差:−0.4ポイント
でも他の要因もある
実際のデータでは「制度導入以外の要因」も一緒に影響しています。
たとえば2024年の日本は…
- 株価が上がった
- 円安が進んだ
- 金利が動いた
など、新NISA以外の要素もたくさんありました。
だから「投資が増えたのは新NISAのおかげ? それとも景気のせい?」が分かりにくいのです。
このような変化を DiD で整理すると、次のようになります:
数値で見る DiD(差の差分析)
| 指標 | 導入前(前年比伸び率) | 導入後(前年比伸び率) | 変化(%ポイント) |
|---|---|---|---|
| 投資信託(処置群) | +22.8% | +27.9% | +5.1 |
| 預金(対照群) | +1.0% | +0.6% | −0.4 |
| DiD(処置群の変化 – 対照群の変化) | — | — | +5.5 |
- 処置群(投信)の伸びが +5.1ポイント
- 対照群(預金)の伸びが –0.4ポイント
- DiD = 5.1 − (–0.4) = +5.5 ポイント → これは「新NISA制度導入によって、投信残高の前年比伸び率が預金に比べて 5.5ポイント上昇した」という因果効果の推定です。
平行トレンド仮定
株価、為替、金利など他の要因(景気要因)は投信の伸びにも預金の伸びにも同じように影響すると考えます(=平行トレンド仮定)。
この仮定の下、処置群の変化、対照群の変化の両方に景気要因が含まれているなら、処置群の変化から対照群の変化を引けば、景気要因による変化分が消去されます。そのため、差の差(引き算することで景気要因を消去)が「制度導入のおかげ」と考えられるのです。
まとめ
- 因果関係の分析とは「Aが原因でBが起きた」をデータで確かめること
- 新NISAを例にすると、投資信託が預金より大きく伸びた分が制度導入の効果


