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適正株価(フェアバリュー)

株価が市場の効率性から逸脱することがあるなら、割高か割安かを判断するための指標としてフェアバリュー(適正株価)を意識することも重要です。これは、市場が効率的である場合の株価です。

理論的には株価は将来配当の割引現在価値の合計です。将来の1株配当を予想し、それを現在価値に直せば理論株価を算出できますが、将来配当も、現在価値に直す際の割引率(無リスク金利+リスクプレミアム)も直接は観察できないため、結局は推計に依存します。したがって理論株価を厳密に算定するのは難しく、実務では別のアプローチでフェアバリューを考えます。

三大投資尺度と「相対評価」という発想

割安株を探す際には、以下の三大投資尺度と呼ばれるものがよく使われます。

  • 配当利回り=1株配当/株価
  • PER(株価収益率)=株価/EPS
  • PBR(株価純資産倍率)=株価/BPS(1株純資産)

いずれも「株価との比率」です。一般に、配当利回りが高い・PERが低い・PBRが低いほど割安と評価されますが、絶対的に固定された比率はありません。景気・金利・ビジネスモデル・市場心理などにより、同じ企業でもそれらの比率(バリュエーション)は揺れます。

そのため、自社の過去からのレンジや同業他社との比較といった相対評価によって、フェアバリューの当たりをつけます。

“連動”するのになぜ“絶対値”が定まらないのか

PERは「現在の株価がEPSの何倍か」を示す指標です。将来のEPSが大きく成長すると見込まれるなら、高いPERでも正当化され得ます。他方、成長が乏しいのにPERが高ければ割高とみなされます。

ただし、将来のEPSもフェアバリューも直接観察できません。そこで、前提が近いと考えられる自社のPERの過去レンジや同業他社のPERと相対比較し、現在の株価の割高・割安を判断します。

必要に応じ他の指標(PBR・配当利回り・PEGレシオ・EV/EBITDA・株価売上高倍率・ネットキャッシュ比率など)も併用されます。

市場全体のフェアバリューを測る(バフェット指標/市場平均PER)

バフェット指標(株式時価総額÷名目GDP)と市場平均PER(株価指数÷指数EPS)は、いずれも「株式時価総額と名目GDP」「指数EPSと指数水準」が長期的に連動するという前提のもと、過去との比較で株式市場全体の割高・割安を判断する指標です。例えば現在のアメリカ株式市場の各種指標は、過去の値との比較で割高と見られています(Current Market Valuation)。

これらも、絶対的な適正値が1つ決まっているわけではなく、過去からのレンジのどこに位置しているかで水準感を掴みます。「連動はするが絶対的な固定値はない」という点は個別銘柄と同じ考え方です。

まとめ:フェアバリューは「帯」で捉える

フェアバリューは、理論的に厳密な一点解ではなく、前提に依存する相対的なレンジ(帯)です。三大投資尺度は「株価と何かの比」にすぎず、その比率は時々の環境と事業の質に応じて動きます。
だからこそ、過去レンジ同業他社比較を出発点に、比率の妥当性を考えます。最終的には「この前提なら○○〜○○倍が自然」という帯の感覚で割高・割安を判断します。

注意点――連動しないものには相対比は適用不可

営業利益とTOPIXなどを時系列で並べ、営業利益の増減がTOPIXと連動していると説明するグラフを見かけることがあります。しかし、株価や多くのマクロ指標は、それ自身の動きの特性により“見せかけの相関”が生じやすく、実際には相互連動していない場合があります。このような場合には、水準ではなく“変化率”に変換してから相関を確認します。または、それぞれが自己の過去の値の影響を受けながらも、長期的に一定の関係を保っている場合(これを共和分関係といいます)もあります。

珍しい変数の組み合わせで安易に「連動」を主張する分析は、統計的な検証を欠いている場合が多く、注意する必要があります。

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