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全ての道は交易条件に通ず?(4)貿易収支

今回は交易条件と貿易収支の関係について確認します。

GDP統計では「財貨・サービス収支」という項目で数値が公表されていますが、ここにはサービス収支としてインバウンド収入(外国人旅行者による消費)なども含まれているので、それを含まない貿易財のみからなる普通貿易統計(財務省作成)を今回使用することにします。

世界金融危機以降、輸出入とも数量指数は横ばい基調

(注)2003年以前のものは2015年を100とする指数を、2020年を100とする指数に換算のうえ接続

数量指数を観ると、それまで増勢基調にあったものが世界金融危機時に落ち込んで以降、輸出・輸入ともに横ばい傾向にあります。この点について、大木博巳「輸出が伸びない日本~日本企業のグローバル化の成功の裏返し~」国際貿易投資研究所(2023/05/01 No.522)は、「在外日系企業による販売調達の現地化の進展が、日本からの輸出を代替していると思われる」と指摘しています。

貿易収支も交易条件に連動

為替レートが変化しても、数量が変化しない(または変化が鈍い)とすれば、円高になると円建ての輸入金額が減り交易条件と貿易収支が改善、円安になると円建ての輸入金額が増え交易条件と貿易収支が悪化するはずです。

通常、貿易収支は輸出金額マイナス輸入金額で算出しますが、ここでは指数を使うため「輸出金額指数/輸入金額指数」としました。

交易条件は、GDP統計の輸出入デフレーター、企業物価の輸出入物価指数のほか、普通貿易統計の「輸出価格指数/輸入価格指数」からも算出できます。

貿易収支に相当する「輸出金額指数/輸入金額指数」と交易条件に相当する「輸出価格指数/輸入価格指数」が連動していることがここでもわかります。

資源価格高、円安、日本の輸出競争力低下などで交易条件が悪化

労働分配率や労働生産性など他の条件を一定とすれば、交易条件は実質賃金(名目賃金を物価で割ったもの)にも影響します。

交易条件の改善: 交易条件が改善すると、同じ量の輸出でより多くの輸入品を購入できるようになります。これにより、輸入品の価格が安くなり、国内の物価全体を押し下げることで、消費者・労働者の購買力が向上し、実質賃金が上昇します。

交易条件の悪化: 交易条件が悪化すると、同じ量の輸出でより少ない輸入品しか購入できなくなります。これにより、輸入品の価格が高くなり、国内の物価全体を押し上げることで、消費者・労働者の購買力が低下し、実質賃金が低下します。

エネルギーなど資源価格高だけでなく、円安も輸入物価を押し上げ、交易条件を悪化させる要因ですが、円高であっても、自国製品を外貨建てで高く売ることができなければ、円建てで値引き販売していることと同じになり、交易条件が悪化します。例えば、2010年から2013年までの円高局面では交易条件が悪化していました。

しかし、交易条件は、2023年から改善の兆しが見られます。また、雇用者報酬実質値前年比(GDP統計)や実質賃金指数前年比(毎月勤労統計調査)も2024年第2四半期からプラスに転じています。これらの兆しが今後定着していくことを期待しましょう。

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